ミュージカル・ワークショップ
演出家 宮本亜門
[講師によるレクチャー]
[ワークショップの概要]
- アウトライン
- 講師プロフィール
[ワークショップの構成]
- スケジュール
- ワークショップのスタイル
- 公開ワークショップ
- ガイダンス(ワークショップ初日)
- シーン構成
- トークとレクチャー(公開ワークショップ)
ガイダンス(ワークショップ初日)
はじめに
僕は「アイ・ガット・マーマン」という最初の作品を29歳で作った時、正直、演出という仕事がわかりませんでした。
ただ、ダンサーとして舞台に立っていた18歳のころから演出家になりたいと思っていて、稽古場なんかで出演者を見ながらスタッフの勉強をしていました。そして「いつか1曲、振付をしたい」と思いながら、ダンスリーダーを経て、まず、振付の仕事につくようになりました。次第にそれでスケジュールが埋まるようになりました。しかし、演出はなかなかできません。そこで、2年間、ロンドンで頭を冷やすことにしました。
帰国後は、企画書を持って回りました。でも相手にされません。それまでも10年近く、たくさんの演出家や振付家の下で、短い稽古期間に、簡単な振付で、無理矢理に初日を迎えている現場を見ていましたから、日本では無理だといじけてしまいました。ところが友人が、そんな生意気なこと言ってないで、とにかく1本作ってみなさいと言ったのです。そして友達を集めて作ったのが「アイ・ガット・マーマン」でした。
そんな風に先生もなくやってきました。「ミュージカルってなんだろう」と、スタッフみんなが好き勝手に意見を出しながらものごとを作っていくのです。スケジュールに追われがちな現場では、最初に提案したものが何となく「良いですね」と言われて、気づいたらそのまま推敲もなく舞台にかかったりしますが、そうじゃない。踊り、動き、感情、全部についてみんなが言い合うようでないと、ミュージカルは絶対、面白くありません。3日間でそれを皆さんに伝えるのは不可能だと思います。が、今回は私たちも昔にもどってやりたいという姿勢で臨んでいます。
ミュージカルについて
最近は他にも出てきていますが、ブロードウエイとロンドンが、現在、ミュージカルを作っている中心です。しかし、二つはどこか流れが違っています。ロンドン系は、どこかオペラの流れがあります。アメリカ人には、オペラみたいなのはミュ−ジカルじゃない、ミュ−ジカルはもっと楽に見れるものだという考えがあります。ちょうど中間にスティ−ブン・ソンドハイムという人がいます。世界的に人気のある人ですが、日本ではほとんど上演されていません。難しいからです。まず歌が難しい。彼は普通の音階を使うことを嫌います。かなり複雑な不協和音を取り込むことで感情を絞りだそうとするのです。日本で上演された作品は、「スウィ−ニ−・トッド」「ジョ−ジの恋人」あとは「ウェスト・サイド・スト−リ−」の作詞家でもあります。ソンドハイムの詞と作った曲というのは、出演者の心情が、微妙に変わっていく音階と一緒に変化していくのがわかります。
こういう風に作品を見ていると、その内に、初めて見る作品でも音を聞いたら誰のものかわかるようになってきます。出演者が作品を知る必要はないというのは違うと、僕は思います。全部知る必要はないかもしれませんが、作風への理解や、背景、そして、どうすればその作品らしくなるのだろうということを勉強してください。勉強すれば表現できるレベルも高くなるだろうし、オ−ディションに受かる確率も高くなるでしょう。
この「MERRILY WE ROLL ALONG」という作品は、単純に言うと、若い時はみんな夢も希望も持っているけれど、人間はそれぞれにいろいろあって別れることもある。けれど、もともと持っていた情熱は変わらないよという話です。
最初に僕たちスタッフの話をしましたが、こういう所を重ねて見ています。皆さんの将来も重ねています。みんなで作っていきましょう。
シーン構成
(一幕物ですが、便宜上シーンを4つに分けられていました。)
シーン1
最初は高校の卒業式、式典です。そこに卒業生のフランクがスピ−チに来ます。あいさつから始まったスピ−チは、どんどん、人生には妥協が必要だといった説教じみた話になっていきます。聞いている高校生はイヤになっていく。これが最初のシ−ンです。
シーン2
いきなり5年前にもどります。フランクがトニ−賞を受賞した時のパ−ティのシーンです。フランクはトニ−賞を取って大成功しているわけですが、そのパ−トナ−はチャ−リ−ではありませんでした。チャ−リ−はおめでとうと言いに来るのですが、フランクは「新しいパ−トナ−を得て僕は幸せだ。」とスピ−チするわけです。そして、以前のパートナーであり、幼なじみでもあるチャ−リ−とメアリ−はとても辛い思いをするのでした。
シーン3
今度はもっと昔。3人が25歳のころ。夢をもって、はじめてニュ−ヨ−クに出てきて、いつか必ず自分たちのショ−を上演しようと言っている頃。チャ−リ−は詞を書き、フランクは作曲をし、メアリ−は2人が何とかプロダクションを続けられるようにとアルバイトして助けています。3人は一つの舞台を何とか成功に導こうとします。しかし、その舞台は大失敗します。フランクはシ−ンの最後に、2人の肩を抱きながら、「絶対いつかはモノになる。いつまでも一緒にうまくやっていこう。未来はあるはず」と歌います。
シーン4
最後のシーンは、最初の高校の卒業式のシーンに戻ります。スピーチに立っているフランク。その場に、チャ−リ−とメアリ−がくるのです。そして、「元気かい。また、やりなおそう」と。最後に堅く握手を交わします。
トークとレクチャー(公開ワークショップ)
かなり無理のある企画でした。最初にも受講生に「普通、3日間で何かを作るなんて無理。でも、その中で存分に「遊ぶ」のだと理解してほしい」と言いました。3日間で1本のミュージカルをつくるのは不可能です。
まず、技術があって、それをクリアした上に感情があります。ミュージカルはどうしても技術優先になってしまいます。昨日、一昨日と皆がんばっていますが、とにかく覚える、忘れないという感じです。
「MERRILY WE ROLL ALONG」は、初演の演出が「オペラ座の怪人」のハロルド・プリンス。ソンドハイムとプリンスが2人で組んでブロ−ドウェイで上演し、大失敗した作品です。日本では上演されていません。でもやり方によってすばらしい作品になると思っています。
ソンドハイムは知っていますね。日本で上演されたものは2つしかありませんが、ミュージカルの神様です。表にあらわれるものと裏の間にギャップがあって、とても難しい舞台を作ります。でも、敢えて、まずは挑戦してみようじゃないかと言うことで、選びました。僕はいつか上演したいと思っています。
作曲家のフランク、作詞家のチャ−リ−、メアリ−という、男性2人、女性1人が主役です。2時間ぐらいの作品ですが、現在のシーンから始まって、どんどん昔に遡っていく構成で、とっても実験的な作品です。今回は20分ぐらいに再構成しました。
−ランスルー終了(通し稽古)−
3日間の稽古を通じて作ってきたものを見てもらいました。今日になって、うまくなった人もいます。いろいろです。もう少し、時間がほしかったと思います。
ワークショップを開いて下さってありがとうございました。
最後に一人ずつ、名前と今の気持ちを言ってください。それぞれがライバルとなって、どんどんお芝居にでてください。
宛先・お問合せ先
大阪市市民局文化振興課「ワークショップ」係
〒530 大阪市北区中之島1ー3ー20
TEL. 06-208-9167
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