「a life in musicals
勇気がいるよ、キミがほんとうにしたいことなら」
ニューヨーク時代
高校を卒業し、兵役が終わると、すぐ、ずっと念願だったニューヨークへ行きました。いろんな先生がいろんな場所でクラスを持っていました。とにかく何でも勉強したくて、バレエ、タップ、フラメンコ、ジャズ、歌もやりましたし、演技のクラスにも通いました。朝から夕方までレッスン。その後、レッスン代と生活費のために深夜までアルバイト。親も友達も頼らず、自分で生活していると、まだまだ勉強できるぞという気持ちになれました。
それはまた、オーディションの日々でした。アルバイトでなく、舞台に立って生活できるようにならなければなりませんから。初めてソロパートをもらったのはこの頃です。
この時の審査スタッフからは、その後も声がかかり、他の仕事も一緒にやりました。自分のチャンスは自分で作れるようにしなければなりません。ちょっと違うなと思っても、新しいことをやって新しい人、新しい演出家に巡り会って何かをプラスしていくのです。一つの仕事が、次の仕事に結びつくかもしれません。だから仕事の一つ一つをちゃんとしなければならないのです。
オーディション
ショービジネスは、自分を売るのが大事なので、いろんな先生に会ってみて、自分にあった先生と出会うことが大切だと思います。自分で自分を売り込むオーディションは非常に個人的なもので、全部の責任が自分に返ってくるので、サポートしてくれる人が必要です。ダンスや歌や演技の先生は、そのサポーターなのです。
振付や演出の仕事を始めるようになると、オーディションを受ける側も審査側も体験することになり、物事が広く見えるようになりました。オーディションでは、自分に与えられる1分なり2分なりの時間を有効にプレゼンするための準備が必要です。ダンスなら決められたダンス以外にも得意なモノ、コミカルな趣向とか、歌でも得意があればそれを自分用のキーに直した楽譜を用意して持っていくのです。ここであせる必要はありません。審査側としては、与えた時間を、自分のテンポで、きちんと演出して、見せて欲しいのです。
オーディションを受けても仕事がない場合もたくさんあります。例えば男性を先にオーディションしたとします。そこで身長が175センチぐらいでそろってしまったら、174センチの女性は・・・ダメです。歌よし、ダンスよし、演技も良い。でも、どうしようもありません。だから自分のせいだとばかり思わないことです。そしていろんなオーディションにチャレンジすることが大事です。
日本へ
初来日は突然思い立った旅行でした。これが本当に楽しく、また来ようと思っていたところ、1981年、オオサカのジャズダンススタジオで教えてみないかと誘いを受け、再来日。テレビの仕事などを経て、今はステージダンスの振付など、日本での仕事もなれてきました。今は宝塚音楽学校や大学など、いくつかのクラスを持っているので、いろんな生徒さんと出会います。レッスンを続けて上手くなっても、結婚するとやめてしまう女性が多いのは不思議なことです。この辺り考えたいですね。
ジム ジャンル別にしてしまうと、ミュージカル性が出なくなってしまいます。でも、ジャンル別に勉強して自分の幅を広げることはプラスになります。
Q 大阪市の新しい劇場について・・・。
ジム 難しいね。大阪市がソフトに力を入れてくれるのは、劇場に限らず、すごく嬉しい。でも、これから劇場を作って、いろんなことをやっていかなければならない。どういう風にしていけばいいか、というのは難しいね。
でも・・・一番大事なのはお客さん。日本人は作品でなく「顔」を見に行く人が多いですね。でもそれだけでは、いいものが作りにくくなると思います。ある人が、その方がお客さんが入るからという理由で同じような役回りでばかり出るというのでは、「役」にはなりません。見る方も、いろんなものを探さないと良い作品に会えません。物語が面白そうとか、演出家に興味があるとか、振付家に興味があるとか、いろんな理由でいろんな作品を探してほしいと思います。
Q ダンスが好きで、将来仕事にしたいのですけれど・・・。
ジム これしかない、と決めてしまうことです。逃げ道を作ってしまうと逃げる気分が大きくなってしまいます。目標を「ミュージカルをする」という一点に持ち続け、一所懸命に続ければ、チャンスは出てくると思います。やめようかなと思うことはあります。腰がいたい、金もない。でも「やるでエ」それしかない。
がんばってください。
(プロフィール)
ジム・クラーク/演出・振付家:
1947年生まれ。ブロードウェイ、ラスベガス等のステージ、テレビの出演、『ウエストサイド物語』等の振付やオリジナル・レビューの制作に携わる。1981年の来日以後、宝塚歌劇団や梅田コマ劇場の作品の振付を担当するほか、大阪音楽大学、宝塚音楽学校の専任講師に就任。BMT (ブロードウエイ・ミュージカル・シアター・スクール) で大阪発ミュージカルをめざし人材養成にあたる。
大阪市市民局文化振興課「ワークショップ」係
〒530 大阪市北区中之島1ー3ー20
TEL. 06-208-9167
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Performing Arts Symposium Osaka 96 Page (2)
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